Column No.056
日蓮大聖人は「先業に任せて」ということをおっしゃっています。
過去の行いに合った生き方が大切
先業に任せてとは、
生まれる前の過去世の行いによって、今の人生が決まる。
過去の行いが原因となって、今の結果として現れてくる。
ですから、今の生まれ持った能力・智力など変えることはむずかしいのです。
この人生で、自分の能力以上のものを無理して求めたりするのは愚かなことで、先業(過去の行い)に合った生き方をするのが大切だと述べています。
自分の置かれた環境や立場で、一生懸命コツコツと努力することが価値あることなのです。
無理して自分の身の丈以上のものを求めようと思うから、苦悩・嫉妬が生じてくるわけです。
仏さまが与えてくれた苦しみ
名女優といわれた樹木希林さんがおっしゃっていたことがあります。
彼女は、亡くなる十数年前に乳ガンを患い、晩年全身にガンが転移していましたが、それを公表し、大変明るくインタビューに答えておられました。
その中で「自分の後姿を冷静に観ている事が大切で、そして無理せず、コツコツと精進することが大事だ」とお話ししていました。
乳ガンより十数年、その間に内面の苦悩・葛藤は他人の計り知れない大変な苦しみがあったと想像できます。
この言葉を聞いて、私は日蓮大聖人の「先業に任す」そのものだと感じました。
その境地に達するために仏さまが苦しみを与えたような気がしました。
人生の苦しみから悟る
私たちも、この人生で苦しみが多くあります。
逃げたりしないで、何か小さいことでも苦しみの中から悟ってほしいものです。
また、樹木希林さんは「覚悟ができると気楽なものですよ」ともおっしゃっておりました。
「覚悟」とは「信じる」ことです。
お題目(南無妙法蓮華経)を常に唱えていると何かの形で教えてもらえるものです。
日蓮大聖人も「先ず臨終の時を習うて、後に他事を習うべし」とおっしゃっています。
平成31(2019年)年01月01日発行 第82号より