釈迦の心⑫ – 仏が悟った一念三千

圓福寺だよりコラム「仏音」

column No.025

 

自分が大きな生命の歯車の一つ

一念三千を悟り、時間、空間を超えて大宇宙と同体になることが成仏です。

日蓮聖人の教え以前では、自分の心の中を深く見つめ、瞑想や、自分の知慧や、魂を磨いていく修業をして、一念三千を悟っていきます。

日蓮聖人は、お釈迦様の真実の教えとして、強く信じる気持ちと、南無妙法蓮華経(お題目)を唱え、法華経の教えを実践することによって、仏と自分の距離がだんだん縮まってきて一体になってくると説いています。

仏が悟った一念三千というものを、南無妙法蓮華経によって仏より頂ける、これが事の一念三千(本門の一念三千)ということです。

この大宇宙の全てのものはお互いに深くかかわり含い、別々の存在ではなく、一つということです。大自然の営みの中で、もちつもたれつの関係です。

結局、この大宇宙はとてつもない大きな一つの生命であるということです。私たち人間も動物、植物、石、土、水、空気、全て独立しているのではなく大きな生命を構成している一つ一つの細胞のような役割をしているのです。自分自身大きな生命の一つの歯車のようなものです。

法華経の考えでは、この大宇宙の大きな生命を仏様といっています。大宇宙すべてが慈悲の心を持った仏様の生命なのです。

私たちの住む地球を1つの生命と考えてると、川は血管のようなもの、山も海も自然界全て一つの生命を支えているのです。環境を悪くし破壊する行いは自分の体を傷つけているようなものです。

 

事の一念三千(本門の一念三千)

次に「事の一念三千」について説明していきます。

お釈迦様は、法華経を説いている時「私のあと世の中が乱れた時代に法華経を広めていく者がいるか」と問うと多勢の菩薩たちが「法華経を広めるのは非常に困難ですが、私たちにやらせてください」と言います。

ところが、お釈迦さまは「止めておきなさい。あなたがたがやることはない」と言いこの世には、法華経を広める任務を担った者が私の弟子としているのだ」と述べるのです。

「法華経を広める者はいないか」と問いながら、「広めさせて下さい」と言う菩薩達に、「止めなさい」と言う、何か矛盾しているような言い方です。

 

 

平成14(2002年)年07月01日発行 第49号より